親切なタクシードライバーさんと思い出

もう10年ほど前のお話になりますが、その頃の私は大阪市内の某イベント会社で勤務していました。ある日、出勤前に奈良県にある施設へイベントに関する資料を届ける予定が入っていました。その頃の私はまだ20代前半で独身、不規則な仕事の合間をぬって友人と飲み歩くような生活でした。前日に仕事が早く片付いたため、いつものように友人と飲みに出かけ、バカな私は深夜遅くまでハメを外し楽しんでいました。そして当日、目が覚めて驚きました。なんと奈良県の施設との約束の時間30分前です。到底間に合いませんので施設へ遅れる旨の連絡をし、急いで身支度をしタクシーに飛び乗りました。いくらかかるか不安もありましたが、電車を乗り継ぐよりは早く着くだろうととにかく必死でした。そんな私の慌てふためいた様子を見て、タクシードライバーさんが「寝坊ですか?」と同情の表情で聞いてくれます。事情を説明すると「頑張って1分でも早く着くように運転しますね。」と言ってくれたのです。車内で少しでも気を紛らわせようといろんな話をしてくれました。そして予定よりも早く到着し、お礼を言って会計を済ませようとすると、「お姉ちゃん待っててあげるから、とりあえず急いで行っておいで。」と。厚意に甘え先に用事を済ませ急いで戻ると、先ほどのタクシードライバーさんが待っていてくれました。今度こそはと会計をしようとすると「自分も大阪へ帰るから乗っていきな。メーターはもう止めたから行きの分だけ最後に払って。」と言ってくれました。有難さと申し訳なさで気持ちがいっぱいになりました。結局会社まで送ってもらい、料金もかなり値引きしていただきました。お詫びしましたが「おっちゃんのおしゃべりに付き合ってもらったお礼やから。」と、本当に真摯なタクシードライバーさんでした。一生忘れられない思い出です。